世界が色を失ってから
そんなことを考えていたって、時間は過ぎていくもので…9日になった。



何十年ぶりかの大寒波の影響で例年より

冷え込んだ街は、未明から少しずつ雪が降り

始めた。


去年と同じように、、、




朝から進樹さん、充希さん、充笑さん、

幸枝、そして私の五人は進樹さんの車で少し

遠い場所にある高橋家の墓に向っている。


車内では彼が好きだったアーティストの曲が

流れる。


「樹、RAD好きだったよね〜!」



幸枝が思い出したように言う



「そうそう、元々は私が好きだったんだけどいつのまにか樹の方が詳しくなっててね、

高校の頃からライブにも行ってたみたいだし。」


「私も樹の影響で好きになりました。

よく口ずさんでましたよね、」



思い出したのか充笑さんは笑いながら



「そんなに上手くはなかったけどね〜。



憧れてギターも練習してたけど、あいつ音楽の才能ゼロだから悲惨だったわ〜。

思い出しただけで笑えてくる。」


「歌が上手くないのは母さん似だからなー。

樹が小さい頃は母さんと樹と希咲ちゃんと三人でよく風呂に入りながら歌ってたなー。二人は音程よく外れてたけど、、。」



進樹さんまでクスクス笑いだした




「失礼ねぇ!

樹は音楽だけじゃなくて料理の才能もなかったわ、掃除はできたけど。」



「あ、でも樹のオムライス美味しいですよ。充希さんの味によく似てました。」



「それね、樹が唯一作り方聞いてきたのよ。


高校に入ったくらいの頃にいきなり“オムライスの作り方教えてくれ”って、

何回教えても卵が巻けなくてね〜。」



たしかに、樹の作ってくれるオムライスはおいしいけどいつも卵が破れていたり、スクランブルエッグみたいだった



私もそれを思い出して失笑する


すると幸枝が



「実はそれ、希咲が高校の最初の自己紹介の時、好きな食べ物オムライスって言ったからだよ。」


幸枝のその発言で車内は大爆笑


私の顔は赤くなった



「あの子、希咲ちゃんにぞっこんだったもんね〜。


あ、そういえば希咲ちゃん文化祭でコスプレしたことあるよね?」

「はいメイド服着ました。」


高校二年の文化祭で私たちのクラスは喫茶店をした。

女の子はメイドっぽい服で、男の子は燕尾服みたいなもので、あの時の樹の燕尾服姿はカッコよかったなぁと思い出す



「あいつね、希咲ちゃんのメイド服姿の写真ニヤニヤしながら見てたのよ〜



部屋に入ったら気持ち悪いくらいニヤニヤしてたから携帯奪ってやったら、画面には希咲ちゃんのメイド服姿。

流石に姉の私でもドン引きしたわ。」



「樹、むっつりでしたもんね。」



幸枝がすかさず言う




その後も幸枝と充笑さんは樹の話で盛り上がっていた




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