彼女と交わした会話
あの時は
いつか、彼女と交わした会話。
「もう誰かを好きになる気持ちとか忘れた」
歩きながら、ゆっくりと、円やかに
その代わり、と
彼女はこう続けた
「誰かを大事に思うのは、それだけじゃないって知ったかな」
恋はいつか消える
でも、愛と、尊さはきっと残る
そんなことが言いたかったのだろうか。
私は、恋の縁は無かったけど
人生とても豊かだった
色んな優しさに触れることができたから
そういう世界を愛おしく思う、と
微笑みを携えて
彼女は満足そうに告げたのだ。
精一杯走り抜けた人生に
後悔はない
幸せだった、間違いなく。
私はその隣で、ただただ情けなくなった。
とてもじゃないけど、勝てないって
でも負けたくない
そう思ったのは、
悔いを残さない人生を送ったと
言い切れる真っ直ぐさが欲しかったから。
そんな風に自分も生きれるだろうか