彼のカノジョさん
だんだんと尻窄みに小さくなる声に真崎さんのため息が重なる。



「あの、野口さん仕事詰まってたみたいで、残業してやるつもりだったみたいなんですけど、今日用事があるの思い出したからって言って...」
「つまりはだ。押し付けられたってことだな」


うっ、とそれ以上言えなくなってしまった私に真崎さんは苦笑して、


「断ることも覚えなきゃだな、田辺は」
「でも、困った時はお互い様ですから。それに別に用事があったわけでもないですし」
「全く、人が好すぎるにも程があるよ...」


そう言って真崎さんは書類を私に渡しながら頭をポンポンて叩いた。赤くなった顔を自覚しながらPCと向きあうと


「半分寄越しな。二人でやった方が早いだろ?」
「そんな、このくらいでしたらすぐに終わりますし、大丈夫ですよ?」
「いいから。早く」
「でも、せっかくの週末なのに...」


片思いの私ならいざ知らず、真崎さんにはカノジョさんがいる。デートの予定があるはずだ。
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