彼のカノジョさん
真っ直ぐな瞳で問いかけられ心臓が弾む。


「...なんでもないですよ?」
「ホントに?」
「はい、なんだろ、思いだし泣き?...昔の、寂しかったこと急に思いだしちゃって...それだけです。ごめんなさい、ご心配おかけしてしまいましたね。ホントごめんなさい」


ペコリと下げた私の頭を真崎さんはゆっくり撫で、


「オレが黙っていなくなったから、寂しい思い、思いだしちゃったのかな。ごめんな、田辺」


ホントに優しい。勝手に泣いていたのは私なのに。



「...優しいですね、真崎さんは...」


まだ私の頭を撫でている真崎さんのネクタイを見つめながら呟くと、真崎さんは『ん?』と聞き返した。


「優し過ぎます、真崎さんは。...部下の私にこんなに優しいんだから、カノジョさんにはもっと優しいんでしょうね...」
「えっ?」


私を撫でる手が止まったけど、何故か私の口は止まらなかった。
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