恋慕
「先生・・・って
数学の先生でした?」
視界の中の後頭部が動いて
彼の端正な横顔が現れた。
1年生の英語を中心に
授業を持っている私と彼とは
これまで接点がなかった。
おそらく会話を交わしたのも
これが初めてだった。
「いいえ、英語よ。」
そう言ってまた溜息をつく。
すると彼は意地悪く笑った。
「だからさっきから
溜息ばっかりなんですね?」
「そんなに溜息ついてた?」
「はい。
もう溜息だらけでした。」
そして、あはは、と
声を上げて笑う姿に
私もまたくすり、と
つられて笑う。