恋慕

~不覚にも…~


私と彼は
単純作業に
手を休まず動かしながら、
同時に
口も休まることがなかった。

私達は途切れなく話をした。

他愛もない話ばかりだったけど、
一人で
溜息をつきながら
作業するよりは
比べ物にならないほど
楽しかった。

頭の良い彼の会話は
本当に気取らなくて
楽しかった。

「江良くんは部活動はしないの?」

「生徒会、やってますから。」

彼はにこやかに答える。

「スポーツをしたいとかは
 思わないの?」

チラリと彼を見ると、
開襟のシャツの襟元から
浮いた鎖骨が覗いている。

「うーん。」

彼は少し言いよどむ。

「今時のスポーツって
 何でもお金が
 掛かるじゃないですか?」

そう言いながら
彼は
困ったような顔をして
私を見た。
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