恋慕

「お止めになりますか?
 私のことは
 お気になさらずに
 ご自由に
 決めていただいて
 構いませんよ。」

昔の教え子は
紳士らしい口調で
事務的に言った。

それに一抹の寂しさを感じた。

「正直に言うと、
 今、離婚するのが
 いいのかどうかも
 まだ悩んでいるのよ。」

夫とのことは
彼に会うための口実だった。
今すぐ
離婚どうこうと
いうわけではないのが本当。

「法的なアドバイスなら
 出来ますが、
 そういうお話になると
 私では専門外となりますね。」

困ったように笑う顔が
かつて見たものと
タブって見えた。

私の身体の中に
ふわっと
懐かしい温かさが広がる。

目の前の男性の中に
確かに
かつての彼がいる。

そう思うと
身体に広がった温かいものが
ぎゅっと凝縮されて
目頭に込み上げてきた。

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