恋慕
~夏休み前日~
「お前ら、ぜってぇ気色悪い!」
「何?妬いてんの?」
生徒玄関で上がる
楽しげな声に
誘われるように
そちらを見遣ると
3年生の男子達が
じゃれ合っている。
その中の大柄な男の子が
彼よりも一回り小さな男の子に
背後から
覆いかぶさるように抱きついた。
「やめろ、悟!」
抱きつかれた子が
上げた声にどきっとした。
江良くんの声だった。
「いいじゃねぇか、
減るもんじゃなし。」
大柄な子は
悪びれもせずに言う。
「ほら、お前らホモだろっ!」
周りの男の子達が
囃し立てている。
「僕はごめんだよ!」
腹を立てたような
素振りを見せながら
それでも笑いながら
大柄な子を振り払って
江良くんは
くるりと身体の向きを変えた。
そして私に気が付いた。