2月15日の告白【短編】
2月14日
「教室がチョコの匂い………」
「これは、やばいね」
2月14日、バレンタイン。
男子がソワソワしているのを横目に、女子たちがチョコを交換し合っているのを、アスカと一緒に眺める。
アスカには、簡単に作れるブラウニーをあげた。
「なんか、手の込んだもの作れなくてごめんね」
「ううん、ブラウニー好き」
付き合いだしてから、アスカはブラックコーヒーが実は苦手だと告白して、それからは甘党であることを隠さなくなった。
「リュウ君になにあげるの?」
コソッと聞くと
「迷ったんだけど、リュウはケーキが好きだから、ガトーショコラにした」
とアスカは照れながら答えてくれた。
くそ、幸せそうだな。羨ましい。
「で、チエは後輩くんにあげるの?」
「はあ?なに言ってんの、あげないよ」
「ふーん?」
意味ありげに頷いて、アスカは自分の席に戻っていった。
なんだ、あの子。へんなの。
ふい、と下を向いて、そこにある紙袋が目に入る。
あげないよ。あげない。あげれない。
そう思っているのに、そこにある、特別気合いの入ったラッピングが見えて、ため息をつきたくなる。
ナギ君には、あげられない。