空を願って、海を望んで
◇魚のおはなし
とあるところのとある海、それは宝石を溶かしたような透き通った色をしていて色とりどりの珊瑚礁やイソギンチャク、鮮やかな貝殻、そして様々な鱗を持つ魚がたくさん住んでいました。
そんな海の中、深く冷たい海の底、ではなく太陽の光が届く浅い場所を好んで泳ぐ一匹の魚がいました。
キラキラと光で輝く鱗の色は海を煮詰めたようなエメラルドグリーンです。
この魚は他の魚たちとは少し違っていて友達や恋人などを積極的に作らず、かといって自分を磨くわけでもなく遊ぶこともなく、ただただゆったりと泳ぎながら空を見上げるのです。
周りはみんな首を傾げたり心配したり、嘲笑うものもいましたが、魚はそんな周りを全く気にしていませんでした。
いつものように太陽の明るい日差しを鱗に浴びながら魚は水面ギリギリまで泳いでぷくぷくと息を吐きます。
「あぁ、なんてまばゆい光なんだろう。この海の中まで照らしてくれる太陽の光は実際はもっと輝いて綺麗なんだろうなぁ」
生まれた時から自分を海の中から照らしてくれた光に、魚はずっと憧れていました。できることならばこの海を出て自分の全てで光を感じたいですが魚は海の中でしか生きることができません。
残念な気持ちになりながら魚は尾びれを揺らしました。
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