空を願って、海を望んで
◇妖精のおはなし



とあるところのとある国、風が心地よいそこに1人の妖精がいました。長い長い時を経て、いろいろな国を渡ってきたとても古くて力のある妖精です。


妖精は世界の至る所で生まれます。弱いものもいれば強いものもいますが、力が弱くなりすぎたり妖精自身が疲れてしまうと世界の育む命の輪に戻ってまた新たな妖精になります。


その妖精は風を司る妖精で、何にも縛られず、自由を謳歌することを好んでいましたが、長い時間の中でもう行ったことのない場所はなくガッカリしてしまいました。



「あぁ、どうしよう。もう行ったことのない場所なんかないのに」



妖精は新しい場所に行って新しい発見をすることが好きです。ですが行けるところは全て行ってしまって、これから待っているのは退屈でしょう。


このままでは妖精はいずれ心が疲れて世界の輪の中に戻ってしまいます。ですが妖精はまだまだ消えたくはなかったのです。


ふわふわと飛びながら妖精は海の上を滑ります。といっても風を司るので海の中に入ることはできませんが。


太陽の温かい光を浴びながらぼんやりと赴くままに飛んでいると海の中から何かが反射したのでしょうか。キラッとしたそれに興味を惹かれて妖精は羽を動かしました。




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