空を願って、海を望んで
◇魚と妖精のおはなし



魚は誰かに呼び止められる声に気づいて海の中を見回しました。ですが自分の周りには誰の姿もありません。



「そっちじゃなくてこっちだよ。上を見て!」



言われるがままに視線を上に向ければ海面には見たことのない妖精がいてびっくりしてしまいました。魚は存在は知っていましたが実際に妖精を見たのは初めてだったのです。


対する妖精も初めて見る美しい鱗を持った魚を見てびっくりしていました。そして美しいだけではなく、その鱗は海の力がいっぱい宿った不思議な鱗だったのです。



「わぁ、妖精なんて初めて見たなぁ。びっくりしちゃったよ」


「僕も君みたいな魚がいるなんて驚いたなぁ」



なんだかお互い初めて会ったのに親近感が湧いてきて、たくさんのお話をしてしまいました。


魚は海の中に友達も恋人もおらず、こんなに話をする知人もいないし、妖精は様々な場所で話をすることもありますがすぐに別のところに行ってしまっていたので同じものとたくさん話しをするのはとても新鮮でした。



「そういえばどうして君はこんな浅いところにいるんだい?ここにいる魚は深くて冷たいところを好むんだろう?」


「確かに冷たいところは気持ちがいいけれど、私は太陽の光が好きなんだ。だから浅いところでこうして泳いでいるんだ。……本当は海の中から出て実際に光を浴びてみたいけれど、私は海の中でしか生きられないから」



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