仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
慧さんは大切なものでも愛でるように口元を緩める。
宝石のような双眸が、眩しそうに揺らいだ。

「仕方ないな。今日は僕からしてあげる」


そう言うと彼は私の唇に――優しく、柔らかな口づけを落とした。



ふわりと合わさった瞬間、時の流れが変わったみたいだった。


私の唇から離れながら、彼は瞑っていた瞼をそっと開く。



彼の蜂蜜がとろけるような瞳が、綺麗だ。

ときめきが喉に詰まって、ドキドキと鼓動を刻む胸が滾るように熱くなる。

それでいて、泣き出したくなるくらい切なくて……苦しい。



どうしよう、わたし。慧さんのこと……。



私はいつの間にか、この高圧的で意地悪な王子様に……――恋をしてしまったのかもしれない。



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