仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
今日の撮影内容は『オーダーウェディングドレスのデザインを決めるシーン』と『出来上がったドレスを試着するシーン』なので、前回よりは短い時間での撮影になる。

まずは台本にある絵コンテ通りに、花嫁役の私とコンシェルジュの女性が一緒に動き、カメラの入らないドライリハーサルを行う。

それから立ち位置やカメラ映りを確認するテストリハーサルを何度か行い、ディレクターさんやカメラスタッフさんの映像チェックが入った後、「チェックオーケー!」の掛け声が上がった。

「ぞれでは琴石さんのテスト本番いきまーす」

オーダードレスショップのフロアで、コンシェルジュの女性と好きなデザインのドレスを手に取り、代わる代わる試着する。

本物の花嫁さんは気に入ったドレスのデザインをもとに、『エテルニタ』専属のドレスデザイナーさんへデザインの希望を話し、素材や雰囲気などを打ち合わせすることになる。

デザイナーさんがその場で画用紙に描き上げていくドレスは、どれも見事なものばかりだった。

サラサラと画用紙の上で生まれる鉛筆の柔らかな黒い線を見つめなら、ふと、さっきは何故『テスト本番』と言われたんだろう? と疑問が浮かんだ。
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