仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
テスト本番ということはリハーサルのようなものになる。
不備がなければムービーもスチールも使用される可能性はあるが、それでも前回はテスト本番はせずに本番で回していた。

小野寺さんがいないことが関係してるの? 新郎役は別撮り? まさか風邪?

それとも他に何か来られない程の事情があったのだろうか。

「カット! 琴石さん、真剣な表情よりも笑顔でお願いできますか?」

「はい! 申し訳ありません。もう一度お願い致します!」

ディレクターさんから注意を受けて、かぶりを振る。
集中しなきゃ。



撮影は順調に進んだ。

純白のウェディングドレスからカラードレスまで、既に出来上がっていたオーダーウェディングドレスを着て、最終仕上げのフィッティングシーンを撮影する。

最後に身に纏った上品なエメラルドグリーンのウェディングドレスは見惚れてしまうほど素敵だった。

「琴石さん、前回よりも綺麗になりましたよね。ビックリしちゃいました」

撮影終了後、フィッティングルームでドレスからの着替えるのを手伝ってもらっていると、ヘアメイク担当の女性が明るい口調で切り出した。
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