仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「へ? そうですか?」

私服へ着替えながら彼女の方を振り返る。
エメラルドグリーンのドレスを抱きしめるようにして抱えた彼女は、何度も強く頷く。

「本当に全然違います! 前回も良かったんですけど今日の琴石さんを見ちゃうと、あ〜前回のは違ったんだなと感じました。今日の琴石さんは表現力の幅が広がって、幸せいっぱいの花嫁さんって感じがして凄く好きです」

「そう言っていただけると嬉しいです」

私ははにかむような笑顔を浮かべた。

彼の特別授業は恥ずかしいし、意地悪だし、正直に言えばただ翻弄されているばかりだ。

でもこんなに違うと言ってもらえるのだから、慧さんが言う通り婚約者として過ごすことで表現力を向上させる方法は、やはり正しかったのだろう。

ちょっぴり悔しいけれど、誰かに認めてもらえることは凄く嬉しい。

「なんとなく常盤社長が怒っていたのがわかりました。きっと社長は琴石さんの宣材写真やブックを見た上で、この間の琴石さんは違う! って思われたんでしょうね。すごいな」

その後、ドレスを片付けるヘアメイクさんと暫し談笑した。
挨拶をしてフィッティングルームをあとにする。
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