仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
このお仕事は私が直接“常盤社長”と交渉をして、“常盤社長”の提示した条件をのんで、誓約書にサインもした。

その証拠に、現在は慧さんの家で生活している。

『エテルニタ・グループ』の中で王様のような絶対的な地位と権力を持っている“常盤社長”に、逆らえる人なんか誰もいない。
王様が続投を決めた琴石結衣を降板させろなんて、『ペルラ』が言えるわけがないのだ。

彼は甘くて時に意地悪だけれど、あんな契約までして嘘をつくような人じゃない。

だから私は慧さんが媛乃ちゃんを断ってくれるって、信じてる。

焦点が定まらずに揺れていた瞳にキッと力を入れ、芹沢さんを正面から見据えた。

「そんなこと、常盤社長は許さないはずです」

こんな強気な視線でマネージャーさんを見たことはなかった。緊張感を帯びた心臓がドクリ、ドクリと不吉な脈を打つ。


対して目の前に佇む二人の女性は、私のような緊張感なんかこれっぽっちも感じていなかった。
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