仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「意味わからないです。慧さんの……ばか!」
「うわ、馬鹿って初めて言われたかも。くくくっ、ごめん。そんなに睨まないでよ、ごめんね」
「全然謝罪になってません、それ」
さっきまで、あんなに彼に対して怒っていたのに。甘やかに微笑む慧さんを見ているだけで、胸がぎゅうっと苦しくなる。
毒気を抜かれた私はストンと席に座り、ムッとしながら慧さんを見上げた。
慧さんは形の良い唇に笑みを浮かべる。
「僕だって根拠なく君を起用したわけじゃない。僕は君のことを誰よりも信頼してるし、期待してる。だからこそ僕に相応しい女性になってほしい」
まるで告白のような言葉に耳まで真っ赤にしてしまう。
慧さんに選ばれていたのは媛乃ちゃんではなく私だった。その事実が安心感を伴って全身を包む。
完全に浮き足立った私は、あちこちに目を泳がせた。
「僕のお姫様は世界中でただ一人。結衣だけだよ」
「そんなこと……恥ずかしいから、言わないでください」
羞恥心に染まる顔を慧さんから背けると、私は熱のこもった頬を両手でパタパタと顔を煽ぐ。
ドキドキする気持ちが止められない。
全部、私を“婚約者”として扱うための嘘だって、わかってる。……わかってる、けど。
「うわ、馬鹿って初めて言われたかも。くくくっ、ごめん。そんなに睨まないでよ、ごめんね」
「全然謝罪になってません、それ」
さっきまで、あんなに彼に対して怒っていたのに。甘やかに微笑む慧さんを見ているだけで、胸がぎゅうっと苦しくなる。
毒気を抜かれた私はストンと席に座り、ムッとしながら慧さんを見上げた。
慧さんは形の良い唇に笑みを浮かべる。
「僕だって根拠なく君を起用したわけじゃない。僕は君のことを誰よりも信頼してるし、期待してる。だからこそ僕に相応しい女性になってほしい」
まるで告白のような言葉に耳まで真っ赤にしてしまう。
慧さんに選ばれていたのは媛乃ちゃんではなく私だった。その事実が安心感を伴って全身を包む。
完全に浮き足立った私は、あちこちに目を泳がせた。
「僕のお姫様は世界中でただ一人。結衣だけだよ」
「そんなこと……恥ずかしいから、言わないでください」
羞恥心に染まる顔を慧さんから背けると、私は熱のこもった頬を両手でパタパタと顔を煽ぐ。
ドキドキする気持ちが止められない。
全部、私を“婚約者”として扱うための嘘だって、わかってる。……わかってる、けど。