仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「それから現在建設中のチャペルの件ですが。引き渡しの日程が延期する可能性があると、先ほど現地担当者から連絡がありました」

「向こうは夜中の二時か。話を聞くよ。明け方にすぐ返事をしよう。結衣、僕たちは仕事部屋にいるから。くつろいで」

「はい。ありがとうございます」

二人は険しい形相で仕事の内容を話しながら、リビングルームを出て行った。



先にお風呂を終え、私はリビングルームへ戻ると紅茶を淹れてソファに腰掛けた。

アールグレイティーの良い香りを楽しみながら、ふぅと溜息を吐く。

夕食のフレンチはとても美味しかったけど、あまりの格式高さに肩を張りすぎてしまい、ちょっと疲れたかもしれない。

慧さんの馴染みのソムリエに「彼女は僕のフィアンセ」なんて紹介されてしまったから、ますます緊張してしまった。

婚約者らしく振舞えただろうか、と思い返す。


ふと、そういえば藤堂さんが雑誌を置いていったんだったと思い出した。

テーブルの上にあった雑誌を手に取り、表紙をまじまじと見つめる。アメリカを本国とした女性向けの有名ファッション雑誌だ。
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