仮初めマリッジ～イジワル社長が逃してくれません～

途端に、この雑誌を手に取るまでの色めき立っていた世界が褪せていく。

記事の続きには、ファッション雑誌らしく彼女の色香漂う美貌と肉体美や、パーティードレスのファッションセンスに触れてあった。

ブロンド美人の彼女は亜麻色の髪と琥珀色の瞳を持つ彼と、とてもお似合いに見える。
息が詰まったように切なく痛む胸を手のひらできゅっと握りしめて、私は必死に苦しみを押さえつけた。


最後は【『エテルニタ』の王子様ケイ・トキワの本命は誰？】という言葉でしめられていた。

それって……アマンダ以外にも、慧さんには本命候補がたくさんいるってこと？　

ブロンド美女のアマンダがライバルなんて、映画か海外ドラマの中だけの話じゃないの！？

慧さんの周りの女性って、みんなこんな……。

そこまで考えて自分の足元を見下ろす。フィアンセ候補の女性達と同じ土俵にも上がれてない。

――私って、なんてちっぽけな存在なんだろう。



「何読んでるの？」

頭上から、甘美な声が降りてくる。
先程まで別室で藤堂さんと仕事のやりとりを続けていたみたいだったが、どうやら終わったらしい。

慧さんがソファの背から顔を寄せた。
彼がまとう艶やかな香りが、ふわりと鼻腔をくすぐる。