仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
確かにこの写真が世界中に出回れば、“あのセレブな映画女優も私物として所持しているほどのハイブランドジュエリー”と評価される。

けれど所持しているだけじゃ足りない。大きな記事になるにはもうひと押しが必要だ。
もっと世界が注目し、ジュエリーに魅了されるようにならなければいけない。

そのためにわざと親密さを装って撮られる、なんて。

「いくらなんでも、ここまでするのは」

一夜を誘うような慧さんの写真が、私の心をえぐる。
自分だって、本物の恋人でもないくせに。
勝手に湧き上がる嫉妬心が抑えきれず、思わずムッとしながら言い返してしまった。

慧さんは私が言い返した言葉に対して、不思議そうに首を傾げた。

「そうかな? 目的のモノを己の欲しいタイミングで手に入れるためには、素晴らしく合理的だと思うけど。
実力は勿論のこと人生には策略も必要だ」

「それはあまりにも利己的すぎです。絶対、誠実なほうがいいに決まってます」

普段なら絶対、こんな風に言い返したりしないのに。つい口答えしてしまう。

策略と言ったって……この後、二人はどうなってしまったの?
ただ写真を撮られただけで、夜は別々の部屋へ帰ったの? もしかして本当は……。
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