仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「もちろんです! ブライダルジュエリーの『エテルニタ』も存じております」
「本当? 良かった。それなら話は早いね」
常盤社長は穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
初恋もまだという、ブライダルの世界とは程遠い場所にいる私が『エテルニタ』を知っている理由は――もちろん世界的に有名なホテルグループを母体とするジュエラーということもあるけれど――
私が最後にもらったブライダル系のお仕事が、『エテルニタ』のブライダルジュエリーを身に纏うスチールモデルだったからだ。
お正月休みが明けてすぐにあった、ブライダルフェアの広告撮影。
ジュエリーを身に纏うお仕事は初めてだったので、とてもワクワクしたのを覚えている。
その撮影当日には、私の薬指にぴったりのエンゲージリングが新しく制作されていたのを見て、本当に驚いた。
『デザイナーが琴石さんのために新しくデザインしたエンゲージリングなんですよ』
そう言ってコンシェルジュの女性が微笑んだ。
勿論その場限りの使用で、持ち帰ることなんて出来ない。
けれど、左薬指に輝く大粒の宝石たちを見つめていると、あたかも誰かに愛されているかのような気持ちになる。
広告用の商品だと知っていながら、あまりの幸せに泣きそうになった。
「本当? 良かった。それなら話は早いね」
常盤社長は穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
初恋もまだという、ブライダルの世界とは程遠い場所にいる私が『エテルニタ』を知っている理由は――もちろん世界的に有名なホテルグループを母体とするジュエラーということもあるけれど――
私が最後にもらったブライダル系のお仕事が、『エテルニタ』のブライダルジュエリーを身に纏うスチールモデルだったからだ。
お正月休みが明けてすぐにあった、ブライダルフェアの広告撮影。
ジュエリーを身に纏うお仕事は初めてだったので、とてもワクワクしたのを覚えている。
その撮影当日には、私の薬指にぴったりのエンゲージリングが新しく制作されていたのを見て、本当に驚いた。
『デザイナーが琴石さんのために新しくデザインしたエンゲージリングなんですよ』
そう言ってコンシェルジュの女性が微笑んだ。
勿論その場限りの使用で、持ち帰ることなんて出来ない。
けれど、左薬指に輝く大粒の宝石たちを見つめていると、あたかも誰かに愛されているかのような気持ちになる。
広告用の商品だと知っていながら、あまりの幸せに泣きそうになった。