仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「昨夜はごめんね。眠れた? ……朝食まで、用意してくれて。ありがとう」
ダイニングテーブルに並んだ朝食を見ている彼に見つからないように、「はい」と言いながら、泣きはらした顔を前髪で隠す。
穏やかで優しい声音で言われて、普段通りの王子様然とした彼の様子に少し安心した。
「せっかく貰えたお仕事ですから、最後までちゃんとやりますよ。朝食も、私の担当です」
「そう。ごめんね」
慧さんは苦い顔をしながら、席に着いた。
いただきますを口にしてから、無言で朝食を摂っている。
私も黙々と食事をしながら、スープのカップを口元に持っていく。
泣き通しだったせいか干からびている身体に、あたたかい野菜スープはよく沁みた。
目の前の慧さんを窺うと、端麗な美貌を曇らせるように、彼の目元には薄っすらと隈が出ていた。
「……眠れて、ないんですか?」
つい、言葉にしてしまう。
「まあ……うん。そうだね」
弱々しく微笑んだ彼を見て、もしかして私と同じように……なんて考えて自嘲した。
そんな訳がないのだ。
だって、彼の口から『好きじゃない』と言われたんだから。
ダイニングテーブルに並んだ朝食を見ている彼に見つからないように、「はい」と言いながら、泣きはらした顔を前髪で隠す。
穏やかで優しい声音で言われて、普段通りの王子様然とした彼の様子に少し安心した。
「せっかく貰えたお仕事ですから、最後までちゃんとやりますよ。朝食も、私の担当です」
「そう。ごめんね」
慧さんは苦い顔をしながら、席に着いた。
いただきますを口にしてから、無言で朝食を摂っている。
私も黙々と食事をしながら、スープのカップを口元に持っていく。
泣き通しだったせいか干からびている身体に、あたたかい野菜スープはよく沁みた。
目の前の慧さんを窺うと、端麗な美貌を曇らせるように、彼の目元には薄っすらと隈が出ていた。
「……眠れて、ないんですか?」
つい、言葉にしてしまう。
「まあ……うん。そうだね」
弱々しく微笑んだ彼を見て、もしかして私と同じように……なんて考えて自嘲した。
そんな訳がないのだ。
だって、彼の口から『好きじゃない』と言われたんだから。