仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「わ〜っ! 綺麗!」

窓を開き、テラスへ出る。
ホテルはワイキキのビーチ沿いに面しているので、眼下には一面の美しい海が見えた。

広々としたテラスには、ラグジュアリーなリゾートらしく、ラタン調のガーデンテーブルとリクライニングチェアがある。


うーんと伸びをして深呼吸をした後、リクライニングチェアに寝転べば、視界には青空と海だけになった。

トゥーティティーと、南国の鳥の鳴き声が高らかに響く。


テラスなんてもっと暑いかと思っていたのに。冷たい風が吹き抜けて、気持ちがいい。

絶え間なく聞こえる心地よい波の音が、全身の力を抜いていく。

そのままウトウトしながら、私は目を瞑った。



社長と小野寺さんに昼食に誘われてホテルのレストランへ向かうまで、ついついテラスだけで過ごしてしまった。

食後は解散し、私は部屋に戻ったものの、誰もいないスイートルームはあまりにも広大過ぎる。


鳥の鳴き声と波の音に癒されながらも、慧さんは何故この部屋を予約してくれたんだろう? と、つい考え出してしまった。
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