仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
単なるプレゼント? それともお詫び? まさか、ご褒美? う〜ん、慧さんの意図がわからない。

海はこんなに綺麗なのに。
心の中はもやもやとして、慧さんのことでいっぱいだ。

……ダメだ、気分転換しよう。

どこかに行ってはいけない、なんて言われてもいないし。
自由時間があるのは今日だけなのに、テラスだけじゃつまらないよね。

「よし」

リクライニングチェアから立ち上がり、せっかくなのでワイキキのビーチを散歩することにした。



「琴石、待ってくれ!」

ビーチ沿いの歩道を歩いていると、背後から大声で名前を呼ばれて、びっくりしながら振り返る。

ラフな洋服に着替えた小野寺さんが、ホテルの敷地を出たところから、走ってきていた。

「追いついて良かった。バルコニーから、お前がビーチに向かうのが見えたんだ。一人で出歩くな。危ないだろう」

「小野寺さん、大袈裟です。ハワイは日本人観光客も多いですから。ほら、日本語が聞こえますよ」

「そうだが。マネージャーとして、俺は」
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