仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「お前のことも利用して――切り捨てるはずだ」

小野寺さんの言葉に、身体が強張った。

家族旅行をしている人々の賑やかな声が通り過ぎる。
麗らかな午後のワイキキビーチで話すには、重すぎる話題だ。

私は、彼の言葉を否定するために首を横に振った。

「……それは、違います」

私が無理を言って条件付きで契約を続行してもらい、このオール媒体の長期契約を貰ったのだ。

「違わない。以前の撮影を覚えてるか? お前が『エテルニタ』のブライダルフェア広告でモデルをつとめた」

そう言われて、頷く。
新人時代で最後にもらったブライダル系のお仕事は、『エテルニタ』のブライダルジュエリーを身に纏うスチールモデルだった。

「その時期から、『エテルニタ』の売り上げがかなり伸びている。モデルの名前が売れているわけじゃないから、消費者にとってはお前がジュエリーの引き立て役として機能し、広告のバランスやデザインが印象的に映ったのかもしれない」

ブライダルジュエリーで有名モデルや女優を起用すれば、必ずのその女性が持つ世間のイメージや偏見もセットになってついてくる。
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