仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
ううっ、赤面している場合じゃない。

やっと手にした大きなチャンス。このお仕事を次にも繋げなきゃ。

私は首を小さく横に振って、気合を入れ直す。


今回のお仕事も前回同様ブライダル関係かもしれない。

嬉しいという気持ちと同時に、不安が押し寄せる。

あの『エテルニタ』での夢のような撮影を最後に、私は今日まで一度もブライダル関係のお仕事を貰えていない。
 
ということは昨年、私は無意識のうちにブライダル関係の現場で嫌われるようなことを何かしてしまったのかも。

私は覚えている限りの現場での出来事を思い出して青ざめる。

今回は絶対に失態をおかさないようにしなくちゃ。


喉に詰まった緊張感から、だんだん気持ちが悪くなってくる。
なんだかお腹も痛くなってきた。

「琴石さん、急に大人しくなったね。さっきの勢いはどこに行ったのかな」

斜め前に座る常盤社長が「もしかして緊張してる?」と優雅に微笑んだ。
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