仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
彼女たちが熱愛報道の末破局したり、何らかの不祥事を起こせば、結果として『エテルニタ』のブランドに傷がつくこともあるだろう。

もともとブランド力のある『エテルニタ』は、有名な彼女たちを起用してブランド名や商品名を覚えてもらう必要性がない。

その為シーズンのイメージや時代のニーズに合わせて、消費者の目を引くような世界各国の無色透明なモデル敢えて起用しているというのは、以前『ペルラ』で打ち合わせをした時に慧さんから聞いていた。

その中でも、私のような無名の下っ端モデルを選んでくれたことに驚きを隠せなかったのだが、以前の広告の出来が良かったのであれば、私にとっては嬉しい話だった。

「凄いですね、良かったです!」

「馬鹿! そうじゃない!」

小野寺さんは大きくかぶりを振ると、私の両肩を掴んで彼と向き合わせた。

「常盤社長は、今はお前にとって優しい王子様かもしれない。スイートルームまで用意したんだ、何か意図があるんだろう。
だがそれは優しさじゃない。お前を『エテルニタ』のために利用しているだけだ。
甘く弄んだあとは――切り捨てる」
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