仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
機材や映像チェックの待ち時間がとにかく長いので、私は拙い英語を喋りながら、エキストラの天使のような子供達と一緒に遊びながら過ごした。

日本の梅雨とは反対に、六月のハワイは最も降水量が少ない時期だそうで、天候にも恵まれ、ホテル内のプライベートビーチでの撮影も順調に進めることができた。

ハワイでの日々は毎日がとても忙しく、賑やかに過ぎ去っていった。



六日間にも及ぶ撮影も今日で五日目。
予備日が二日あるものの、実質的には明日がいよいよ撮影最終日となる。

明日は昼間のチャペルで牧師さんと共に新郎新婦の挙式シーンを撮影し、ドレスを替えて夕方にナイトウェディングという日程が組まれていた。

「本日も、お疲れ様でした」と挨拶をして撮影チームの方々との夕食の席をあとにする。


ホテルの自室に戻ると早速バスタブにお湯を張って、ゆったりと疲れをとった。

最後の撮影に備えて念入りにスキンケアをしていると、いつの間にか二十二時を回っている。

「これで、よし! 今日も早く寝なくちゃ」

メインベッドルームへ向かいドアを開く。
すると、部屋いっぱいに薔薇の香りが漂っていた。
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