仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「慧さん……、慧さん……っ!」

大好きです……っ!

ヒクッ、ヒクッと嗚咽が漏れる。
私は薔薇を抱きしめながら、堪えていた感情を吐き出すように声を出して泣いた。




ようやく涙が止まった頃、唐突にスマホの着信音が鳴った。

ビクリと肩を揺らし、指先で涙を拭う。

こんな時間に誰だろう? 明日の予定の電話かな?
『ペルラ』の社長か小野寺さんあたりかと思いながらスマホの画面を見ると、常盤社長と表示されていた。

けっ、慧さん……!?

慌ててスマホを握る。
「もしもし」と呟くように応答すると、「よかった、まだ寝てなかったね」と慧さんの優しい声音が耳に響いた。

「そろそろ見てくれたかなって、思ったんだ」

「はい、あの……ありがとうございました。薔薇の花束なんて貰ったことがなかったから、凄く嬉しかったです」

「そうなんだ。よかった」

彼の声音から、少しはにかむような笑顔が目に浮かぶ。私はトクリと鳴る胸を、手のひらで抑えた。

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