仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
私は目を見開いて、声の聞こえた方へ身体ごと向ける。

「慧さん!?」

ダイヤモンドが煌めくバージンロードを、ここに居ないはずの慧さんが歩いていた。

驚くと同時に、心が淡く色めき立つ。

ブリティッシュスタイルのスーツを華やかに着こなした王子様は、優雅な佇まいで蠱惑的に微笑んだ。


「残念だけど、彼女はキミのお姫様じゃない――僕のだ」


彼は小野寺さんに向かって宣言すると、まるで誰もを虜にする淫靡な悪魔のようにうっとりと双眸を細め、ウェディングドレス姿の私を軽々と抱き上げた。

「きゃあ!」

慌てて慧さんの首に腕を回すと、彼は琥珀色の瞳を柔らく細めた。

「常盤社長……ッ!!」

「ごめんね? 横から攫っちゃって」

慧さんは、愕然とした表情の小野寺さんへクスクスと愉快そうに微笑むと、
まるで結婚式で花嫁を浚う王子様のようにバージンロードを走り出す。

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