仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
重くないの? 慧さんの腕は大丈夫? じゃなくて撮影は!?

激しく混乱している頭の中には沢山の言葉が浮かんだけれど、心の中を占めているのは、慧さんへのあふれんばかりの愛だった。


心臓がドキドキと鼓動を刻み、胸をきゅうっと締め付けるようなトキメキが止まらない。

嬉しさや期待、羞恥心がごちゃ混ぜになって顔を赤く染めながら、近くにある慧さんの顔を見上げた。


彼は楽しそうに笑いながら、「そこ開けて!」とホテル・エテルニタの制服を着たチャペルスタッフへ指示を出す。
その男性は一つ頷くと、恭しく扉を開いた。

風圧で、繊細な刺繍が施されたベールや純白のウェディングドレスの裾が舞う。

「け、慧さん、どこに行くんですかっ!」

「ここじゃない、二人っきりになれるところかな!」

幻想的に染まる空の下、慧さんは一度も足を止めることなくチャペルの外へ駆け出した。

< 172 / 195 >

この作品をシェア

pagetop