仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
チャペルのガーデンを下り、エテルニタ・ワイキキビーチ・リゾートの敷地内であるプライベートビーチへ出た慧さんは、「はははっ」と悪戯が成功した少年のように無邪気な笑い声をあげた。

「ああ、楽しかった」

白砂の浜辺へ私を降ろした彼は、唐突に私を引き寄せるとギュッと抱きしめた。

「あんなことして、撮影はっ!」

「キスの流れは完璧だったし、映像も美しかった。リテイクはないよ」

慧さんは私の後頭部を撫でると、その手を広く開いた背中へ滑らせた。
私は赤面する顔を隠すように慧さんの腕に顔を埋める。

「ど、どこから見てたんですか……」

「君が集中して景色を見ていたあたりかな。僕は映像機器の周辺で、ムービーやスチールデータのチェックをしてたんだけど」

「え!? まったく気が付かなかったです」

「だろうね」

もしかして、何度もキス寸前でストップするリハーサルも見られていたんだろうか。

それどころか、お仕事と言えど、本番で小野寺さんとキスするところまで見、見られてるってことだよね?

ううっ! ひどい、恥ずかしい。それになぜが罪悪感が凄い。
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