仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~

柔らかく、重ねるだけのキスを幾度も交わしたあと。
撮影現場のチャペルには戻らず、慧さんはスイートルームへと私を連れ去った。

「け、慧さん……撮影終了の挨拶、とか……」

「もう終わってるよ」

「借りたものを、返さないと……っ」

「僕が全部管理すると言えばいい」

キングサイズのベッドの上に、ウェディングドレスを着たまま押し倒される。

「んんっ」

慧さんは私の唇を貪るように、性急なキスをした。

肩から腰にそっと手のひらを這わされて、身体が甘く痺れる。


「誰かの花嫁みたいなそのドレスを見てると、今すぐ抱きたくなる」

彼はまるで悪戯を企てるように、うっとりと蠱惑的に口角を上げた。

「な、何言ってるんですか。衣装ですっ」

「そうだけど――少しくらい味見させてよ」

慧さんは官能的に微笑むと、再び強引に唇を覆った。


熱い舌で強引に唇をこじ開け、柔らかく舐めるように私の舌を食む。

息をするのも忘れてしまいそうな激しいキスに、「んんっ」と声が漏れた。
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