仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
『エテルニタ』の広告掲載期間中は『ペルラ』所属ということにはなるが、新規オファーは受け付けない。契約期間が終了すれば、退所になる。

「またモデルになりたくなったら、いつでも戻ってきなさい。次はミセスクラスが待ってるわよ? まあ、その時は私の息子が社長かもね」

「息子さんですか?」

「ええ。あなたもよく知ってる、小野寺薫」

赤い眼鏡のフレームを指先で押し上げながら、社長は茶目っ気たっぷりに言った。

知らなかった二人の親子関係に、私は「えええっ!」と驚きの声を上げる。

「だけど、社長と苗字違いますよね……!?」

「そうよ。私の苗字は旧姓なの」

一緒にハワイまで旅したのに、二人が余りにもサバサバしていたものだから、全く気がつかなかった。

でも言われてみれば、確かに親子ととれるような会話や気安さももあったかも? なんて、道中での色々なことを思い出しながら頷いた。

「息子には場数を踏んでもらおうと思って、沢山のモデルを担当させてたのよ。
私の秘書もやらせてたから、琴石のマネジメントをする時間がない! って、よくボヤかれてたわ」
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