仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
「ネックレスはこれ、イヤリングはこれでどうかな? 指輪は勿論、エンゲージリングで」

慧さんは次々にジュエリーを選ぶ。それを見て、私は双眸を見開いた。

『エテルニタ』の、しかもダイヤモンドとエメラルドを使ったハイジュエリーが、このウォークインクローゼットの中にあるなんて。

「君がいない間に、今までの僕の作品を買い取ったんだ」

慧さんは選んだジュエリーを私の耳や首にあて、「完璧だね」と至極満足そうに頷いた。

撮影の貸し出しでしか身に纏えないそれを見て、お値段を知っているだけに素直に喜ぶことができない。むしろ、これを付けて外出!? と心臓がばくばくとしてしまう。

パーティー会場で紛失したりしたら大変だ。

「あ、ありがとうございます。細心の注意をはらいながら、が、頑張ります……!」

私が緊張した面持ちで言うと、慧さんは「失くした時はその時だよ」とあっけらかんと言いのけた。

「ブレスレットは、仕方ないけど翡翠にしよう。この間、台北貴賓ジュエリーショーで会った『貴賓翡翠』の御曹司が、君にって」

『貴賓翡翠』と言えば、翡翠を専門とした有名なハイジュエリーブランドだ。
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