仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
その後も打ち合わせは滞りなく進んだ。
私が貰うことが出来るギャランティーなどの詳細は、マネージャーさんより伝達されることになっている。
モデルが会議室で聞くことが可能な話はここまでだ。
社長から渡された契約書に、私はその場でサインをした。
「今回はホテルとジュエラーの両方が絡む『エテルニタ・グループ』の大事な企画だから、僕自身が責任者を務めてる。何かあったらその連絡先に連絡して下さいって、君のマネージャーに渡しておいてね」
「わかりました」
モデルがクライアントや関係者と連絡先を直接交換することは禁止されている。
受付へ寄ってマネージャーさんに声をかけようと、先ほど常盤社長から受け取った名刺を一度名刺入れの中にしまった。
テーブルへ広げていた今回の企画資料や台本を自分のバッグの中へしまい、退室する準備を整える。
常盤社長へ精一杯の感謝の気持ちを込めて丁寧に頭を下げた。
「本日はありがとうございました。今後とも、どうぞ宜しくお願い致します」
「こちらこそ。これから宜しくね。期待してるよ、琴石さん」