仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
アナウンサーやタレントを目指さずにコマーシャルモデル一本でやっていくならば、大手企業と長期間契約してもらえるレベルを目指すことになる。

広告・雑誌等のスチールや、コマーシャル・プロモーション等のムービーを含む“オール媒体”で活躍出来れば、コマーシャルモデルとしてはエリートコースだ。


事務所に入ったばかりの頃は一瞬だけ、先輩方みたいになりたいなんてシンデレラストーリーを夢見てしまったこともある。

今思えばとても恥ずかしい。


本当だったら私が一生関わることがなかった煌びやかな世界にいられるだけで、幸せなんだから!

このまま粛々と依頼を拝命しつつ、生活費を稼ぎながら少しでも長くスチールモデルとして仕事ができれば、それで十分……!

事務所に入って二ヶ月目には、そんな風に考えを改めていた。


 
けれど、それすらも夢見がちな考えだったのかもしれない。

下っ端モデルはマネージャーに営業をかけてもらえるわけではない。
クライアントに運良くコンポジットで選ばれるか、オーディションで勝ち残るか。その二択だ。

しかしオーディションに出場できる権利すら、全員が平等に持っているわけではない。
モデル業とは、自分が想像していたよりも厳しい世界だった。
< 3 / 195 >

この作品をシェア

pagetop