仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
広々としたアンティーク調のフロアにはトルソーやドレスラックが並び、様々な色のウェディングドレスがいくつも飾られていた。

まるで異国のお姫様のクローゼットのようだ。
私は美しいドレスの横を通り過ぎながら、ほぅっと溜息をつく。


フロアの奥に進んでいくと、フィッティングルームの扉を開いて待っていてくれた女性がニコリと微笑んでくれた。

「おはようございます! 本日のヘアメイクを担当させていただきます。どうぞこちらへ」

「おはようございます。琴石結衣です! 本日は宜しくお願い致します」

私は早足で駆け寄り、フィッティングルームへ入室した。


白を基調とした上品な内装。
お姫様気分に浸れるような広々とした室内の天井には、シャンデリアが吊るされている。

本来ならば、未来の花嫁さんだけが使用出来る特別な場所に、思わず気分が上がる。


ウェディングドレスラックには、スタイリストさんによって厳選された今日使用する衣装が既に用意されていた。

私が購入できないようなハイブランドのワンピースやアンサンブルが幾つも掛けられている。

凄く素敵なデザインのものばかり! と頭が認識する前に、ふと現実に戻る。
このレベルの衣装の持参を求められたら、今頃の私は間違いなく破産していただろう。衣装があって本当に良かった。
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