仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
小野寺さんが到着したのを認めたディレクターさんが頷くと、「お二人揃ったのでドライリハーサルいきます」とスタッフさんが声を上げる。

「行くぞ、琴石」

「はい! でも、なんで小野寺さんが新郎役を?」

私はビックリしたまま小野寺さんを見上げる。

「驚いたか? 琴石が飛び込んだ後の流れで、『新郎役のキャスティングが未定でしたら小野寺を使いませんか』と社長が俺を売り込んだらしい」

俺だってまたモデルをやることになるとは思わなかった。
そう言って、彼は少しだけ嬉しそうな表情で肩をすくめた。



本番は絵コンテ通り、新郎新婦役の二人が幸せそうに店内へ入るところから始まった。

仲睦まじい二人はそれぞれの想いを馳せながら、ダイヤモンドのジュエリーが輝くショーケースを眺める。

ショーケースには婚約指輪や結婚指輪の他にもネックレスやイヤリング、そして溜息がこぼれるほど美しいティアラが飾られていた。

『“永遠”を誓うエテルニタカラー』というフレーズで有名な、エメラルドとダイヤモンドの組み合わせが煌びやかなブライダルジュエリーもある。

その深みのあるグリーンとダイヤモンドの組み合わせには、誰もを虜にするような荘厳な美しさがあった。

こちらは数百万円を超えるので、お値段もデザインも一般的とは言えない。
このシリーズのブライダルジュエリーを購入する人がいるとしたら、きっとかなりのお金持ちだ。
< 40 / 195 >

この作品をシェア

pagetop