仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
デザイナーさんの説明に、なるほどと頷く。

「婚約指輪の代表的なデザインと言えば、この一粒ダイヤモンドの指輪になります。『ソリティア』を選ばれる女性は非常に多いですよ」

「やっぱりそうなんですね。婚約指輪の王道って感じで憧れちゃいます」

いつかは私も恋した男性と両想いになって、こんな婚約指輪を贈られてみたいものだ。

「琴石さんはお付き合いされている方とか、いらっしゃるんですか?」

「残念ながら、恋人はいないんです」

「えー! モデルさんだから? 恋愛とか厳しいんですか?」

「事務所の規定もあるんですが……事務所に入る以前も男性とお付き合いしたことがなくて。婚約指輪までの道のりは遠そうです」

正直に苦笑いを浮かべてしまい、慌てて撮影用の顔に戻す。

「それなら小野寺さんも事務所の規定で?」

「ええ。俺も今は」

「それならお二人とも仲良しだし、お似合いじゃないですか! こんなに可愛くて美人な女性を放っておくなんてダメですよ」

カップル成立ですねと冗談めかして言うデザイナーさんに、小野寺さんが「そうですね」なんて楽しそうな笑みを浮かべる。

「小野寺さんがお相手なんて恐れ多いですよ」

私は思わず照れ笑いを浮かべた。
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