仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
今回の撮影では音声不要なのでセリフなどはない。
モデルは予め広告用に決定されている絵コンテの内容にあわせて、必要なシーンを大切に演じていくだけだ。

別の角度から同じシーンを撮った後、カットの声が入った。

「良い感じですね。結婚を意識し始めた二人の初々しい感じが出ていて良く撮れてます。琴石さんの表情も、とても魅力的です」

「ありがとうございます」

ディレクターさんの言葉に、私はへにゃりと微笑みが溢れる。
緊張せずに演じられて良かった。

これもコンシェルジュさんやデザイナーさんの思いやりあふれる素敵な話術のおかげだ。

きっと今まで沢山の新郎新婦さんを幸せに導いてきたのだろう。
お二人は会話だけで、自然な空気感を引き出してくれる。

もちろん、新郎役が信頼できる小野寺さんということもある。
初対面の方とは打ち解けるまでに時間がかかってしまう私も、小野寺さんと一緒なら演技に集中することができた。


その後何度かリテイクを重ねながら、撮影チームはその度に映像のチェックに入る。

やっと「チェックオーケー」の声がかかり、打ち合わせ第一回目シーンの撮影が終了した。

「次のシーンは別日の設定になりますので、新郎新婦役のお二人は衣装と髪型のチェンジをお願いします」
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