仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
もしも、メインモデルの仕事を射止めることができていたら。今のようなギリギリの状態ではなかった、かもしれない。

銀行通帳の残高を思い出すだけで、背筋が寒くなる。


デパートのメインモデル候補として選出された時、私がクライアントから振るい落とされた理由は、

『当社の求める人材は、どの世代から見てもどこか親しみやすさを感じられるお嬢さんであり、琴石さんは残念ながら“気が強そうなお嬢様”という印象が拭えず、長期での起用が難しいから』

だったらしい。

確かに学生時代は、『琴石さんってツンツンして冷たい人かと思ってたから、話しやすくてビックリ!』とクラス替えの度に言われてきた。

だから、マネージャーさんから、
『黒と赤のコントラストが、クライアントへ“強い女性”というイメージを与えているのかもしれないな』
と助言をもらった時には、すぐに大好きな赤いリップをやめて、ナチュラルなミルキーコーラルピンクにしてみた。

髪型も、胸元まである重たいストレートから緩めのパーマに変えてみた。
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