仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
日本で今一番花嫁に選ばれているブライダルジュエリーブランドは、世界各国のホテル・エテルニタと提携したウェディングのトータルプロデュースで、世界一有名なブライダルジュエリーブランドの地位を揺るぎ無いものにしようとしている。

だから、常盤社長が主張していることは至極当然のことのように聞こえた。

「君は、僕の意図を完全に表現するために、僕に従って、僕の特別授業を受けること。この条件で契約を結びなおそう。いいよね」

「……は、い」

私は困惑を飲み込む。


実際に今回受け取ることができる莫大なギャランティーを考えれば、一年間他社の依頼を受けられなくても十分贅沢な暮らしができる。

長期間『エテルニタ』の顔として広告が掲載されれば、来年は新規オファーが舞い込んでくるはずだ。

今後は両親を旅行へ連れて行ったり、たくさん親孝行ができるかもしれない。それなら、この独占契約は美味しい話でしかない。


「じゃあ契約内容はこれで」

テーブルの上に万年筆がコトリと置かれた音がした。
私が考えを巡らせているうちに、常盤社長は白紙だった“独占契約誓約書”へ誓約内容の詳細を書き込んでいたらしい。

「……拝見いたします」

数多の花々の空押しに彩られた誓約書を受け取る。
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