仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
【エテルニタ・リゾート取締役、Eternita代表取締役社長・常盤慧殿
私は貴社とのオール媒体長期雇用契約を続行するため、常盤慧殿と個人的な独占契約を交わし、以下の事柄を遵守することを誓います。】

という誓約文から始まっている内容に、私は目を通していった。

【記
(1)今後一年間『エテルニタ』以外の全オファーを一切受けません。
(2)常盤慧殿に従って、あらゆる特別授業を全て受けます。
(3)常盤慧殿の婚約者として同居し、契約期間内を過ごします。】

その誓約内容を心の中で読み上げながら、瞼がどんどん見開かれていく。

「なっ! どういうことですか!? 婚約者として同居するって……!?」

「そのままの意味だけど? 君の私生活も、婚約者として僕が独占させてもらう」

誓約書を持ったまま掴みかかるような勢いで攻め寄った私に、彼は飄々と顔色も変えずに言った。


「君をこの企画に採用するにあたって、“婚約している女性”としての表現力をつけてもらわないとね。
正直に言わせてもらうけど、君の恋愛感情に関する表現力って最悪だよ?」

常盤社長は滑稽なものでも眺めるように顔を歪める。

「そ、それは……」

羞恥心と悔しさで顔が熱くなるのを感じた。
でも、だって! なんて言い訳をしたいけれど、私に言い訳ができる権利はない。
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