仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
その場をどう繕った方がいいのかわからず狼狽る。そんな私に視線を落とした常盤社長は、クスリとひとつ笑みをこぼした。
「今日のところは僕が琴石さんを送っていくよ。キミは安心してくれていい」
「きゃっ!」
常盤社長は私の背中や足の裏に腕を回すと、急に私を抱き上げた。
突然のお姫様抱っこに驚き、慌てて彼のスーツにしがみつく。
それを目に映した小野寺さんは大きく目を見開いた。
「その顔、何か言いたそうだね。僕に何か言える人はあまりいないんだけど」
常盤社長の研ぎ澄まされた声音が高圧的に響く。
小野寺さんは苦しそうに眉根を寄せると、その表情を隠すように頭を下げた。
「……琴石のこと、よろしくお願い致します」
苦々しい声音から、マネージャーとして不本意であることを感じる。
小野寺さんもまた、常盤社長というクライアントに対して言い返すことが出来ないのだろう。
「小野寺さん……」
二人のやり取りが一旦収束した気配を感じて、自分も何か弁明をしようと思ったが、言葉が思いつかない。
常盤社長が長い足を捌き、私を抱き上げたままエレベーターに乗り込むまで、小野寺さんは顔を伏せたままだった。
「今日のところは僕が琴石さんを送っていくよ。キミは安心してくれていい」
「きゃっ!」
常盤社長は私の背中や足の裏に腕を回すと、急に私を抱き上げた。
突然のお姫様抱っこに驚き、慌てて彼のスーツにしがみつく。
それを目に映した小野寺さんは大きく目を見開いた。
「その顔、何か言いたそうだね。僕に何か言える人はあまりいないんだけど」
常盤社長の研ぎ澄まされた声音が高圧的に響く。
小野寺さんは苦しそうに眉根を寄せると、その表情を隠すように頭を下げた。
「……琴石のこと、よろしくお願い致します」
苦々しい声音から、マネージャーとして不本意であることを感じる。
小野寺さんもまた、常盤社長というクライアントに対して言い返すことが出来ないのだろう。
「小野寺さん……」
二人のやり取りが一旦収束した気配を感じて、自分も何か弁明をしようと思ったが、言葉が思いつかない。
常盤社長が長い足を捌き、私を抱き上げたままエレベーターに乗り込むまで、小野寺さんは顔を伏せたままだった。