仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
こんな邸宅に家族と一緒にではなく彼一人で!?

私の築二十年ワンルームでの一人暮らしとの差を嘆いてもしょうがないが、ちょっと嘆かせてほしい。


「なんだか常盤社長のイメージと違っていて、少しビックリしました」

「そうかな? いつも世界中を飛び回りながら、ホテルの最上階に住んでいるような生活だからね。休める時には、地上でしっかり羽を休めたいんだ」

目の前の王子様は『参った』とでも言うように額へ手を当てながら、優雅な吐息を吐くように言った。


彼は世界屈指のホテルを経営するエテルニタ・グループの御曹司。
宿泊先は必然的に、外観・内装・客室・そして接客の全てが最高水準のホテル、世界各国のホテル・エテルニタだろう。

その最上階といえばスイートルームに決まっているだろうから、きっと居心地も素晴らしいはず。
……そこで羽を伸ばせないなんてあるの?

スイートルームでの生活なんて、想像しただけで幸せな気持ちになれそうなものなのに。

きっと彼はお金持ちすぎて感覚がおかしいのかも。実際、私みたいなモデルとこんなに重要な契約を結ぶのだって少し変だし。

寛大な態度で二度も私の窮地を救ってくれた彼に対して、私はとても失礼なことを考えた。
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