仮初めマリッジ～イジワル社長が逃してくれません～
◇

翌朝。セットしていたアラームの音で六時にベッドから起き出した。

朝の支度を整えてリビングルームへ向かう。
慧さんはまだ起きていないようだった。

早く起きすぎても迷惑になるし、家主より寝坊するのも気がひける。そう思って六時にしてみたけど正解だったようだ。

できれば慧さんが一階へおりてくるまでに朝食を準備をしたい。
そして、顔をあわせるまでに心の準備をしておきたかった。

「失礼します」

小声で言って冷蔵庫を開く。
慧さんは普段自炊をしているのか、それともハウスキーパーさんが料理してくれるのか、冷蔵庫の中の食材は豊富に揃っていた。

彼が洋食派か和食派かわからなかったので、とりあえず野菜中心にしようとサラダとミネストローネを用意した。


美味しそうなソーセージをフライパンで焼きながら、スクランブルエッグにする卵液の準備に取り掛かる。
ボールに卵を割り入れていたところで、リビングルームの扉が開いた。

「あれ？　おはよう、結衣。起こしに行こうと思ってたのに」

慧さんはキッチンに立つ私を見つけると目を瞬かせた。

昨夜はあんなに危険人物に見えた彼が、あまりにも爽やかな王子様の出で立ちで登場したので拍子抜けしてしまう。
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