仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~

慧さんが会社へ向かう前に、私用の連絡先を教えてくれた。

「今日は結衣の好きに過ごしてくれて構わないから」と言われたけれど、こんな広い家でどう過ごしたらいいのかわからない。


彼が家を出た後、とりあえずコーヒーを淹れなおしてリビングルームのソファへ沈む。

個人契約分のお給料も貰うことになるなら、十三時からハウスキーパーさんが来るとは聞いているけど、家の掃除とかした方がいいよね?

まずはお皿洗いをして、それから洗濯をして……。


家事をしながら過ごしているうちに、九時半になっていた。そろそろアルバイトへ行く時間だ。

そう言えば、今日もシフトがあることを慧さんに伝えるのを忘れてた。

さっきもらった連絡先に連絡を入れようと思ったけれど、もし大切な会議でもあったりしたら迷惑になる。

たいして大事な内容でもないのでメッセージを送るのは控えて、ここにメモ書きを残していくことにした。

【バイトへ行ってきます。十九時上がりです】

一応勤務先であるカフェの名前や住所まで書いておく。
それから、ダイニングテーブルに置かれていた合鍵を手に取った。

今日の夕食はどうしたらいいんだろう? 慧さんが何時頃に帰宅するのかもわからない。もしかしたら会食とかもあるかもしれないし。うーん、どうしよう?
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