仮初めマリッジ~イジワル社長が逃してくれません~
素肌にバスローブを羽織っただけの慧さんは、後ろ手に寝室の鍵を閉めると私をシーツの上に縫い止めた。

「無断外出したんだから、お姫様には王子様から直々にお仕置きが必要だよね?」

彼は私の両手を縫い止めたまま、うっとりと艶美な声音で歌うように言った。

「それはさっきも謝りました!」

「口ではね。身体はどうかな、また無断で出て行きたくなるかもしれない」

「な、ならないで……んっ」

ちゅっとリップ音を立てて額に口付けられた。続けて頬にキスされる。
目を瞑れば瞼に。耳元に。首筋に、キスの雨が降り注ぐ。

ちゅっ、ちゅっとわざと意地悪をするようにリップ音を立てられ、身体がゾクゾクと震え出した。
足の爪先が逃げ場を探してキュッとシーツを掴む。

「け、慧さん、やめっ」

それから鎖骨の辺りにキスをされ、顔を埋められる。

彼のシュッとした真っ直ぐな鼻梁が、喉の辺りを優しく撫でた。

髪からサラリと漂うシャンプーの香りにクラクラして、ドキドキと鼓動が激しくなる。

なにこれ! 心の準備なんてできてない……!
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